介護の仕事は幸せと悲しみが大きい
今日は大好きなカズさんに「あんたはいつもいい笑顔だねぇ。こっちまで気持ちが良くなるよ。顔見らんとどーしただぁかって心配になってね」と素敵なことばをいただいた。
「あんたの煎れてくれたお茶はホントに美味しい。いつも気遣ってもらって有り難いわ」水分補給に伺うとき、元気だったときカズさんが私に煎れてくれたように、いまは私が煎茶を煎れトロミをつけて出している。
おばさんヘルパーの中には食堂のお茶を持っていく人もいるが、私はどんなに時間がなくてもカズさんの大好きな銘柄の煎茶を目の前で煎れる。
それがカズさんにとってすごく大切な時間になってくれてたら嬉しいなぁって思うから。
「あんたお茶飲んで行かんかね?」といつもごちそうしてくださったカズさんへの恩返し。
新人だったとき、このカズさんの優しさに何度となく救われた。
元気だったころもいまも、カズさんがいつも優しくて素敵な笑顔で接してくださるから、だからこっちまで笑顔になれる。
当たり前なんだけど「いい笑顔だね」とストレートにことばでいただくと、改めて笑顔でいることの大切さに気付く。
お互いの笑顔が、お互いやその周りに笑顔を咲かせていく感じが、なんかすごくイイ!またまた、カズさんは素敵な女性だなぁと思った。
もうひとつ、今日は大好きなイクさんが退院された。
短期間の入院だったけど私はイクさんのことが心配でたまらなかった。
入浴介助でバタバタしてる間に帰られたイクさんが、スタッフの休憩室で座布団を枕に休んでおられた。「イクさぁ〜ん、帰られたんだね〜。よかったぁー」思わず覆いかぶさるように駆け寄った。
「あら?あんた?」声で私をわかってくれたイクさん。
動きにくい体を起こそうとしてくれる姿に元気な様子が伺えて、ホッと安心した。
イクさんが無事に帰ってきてくれて本当によかった。
イクさんは退院疲れもあり、私は夕食をお部屋に持っていき、二人ベッドに並んで座り食事介助をした。「イクさん、元気になられてホントによかった。私もみんなもイクさんのことが心配でたまらんだったよ。
よかったぁ、ホントに嬉しい」涙が出そうになる。
「またぁ」フフフっと笑いながらイクさんがお粥をバクバク食べている。
九十も半ばを迎えたイクさんが退院してきてくれるなんて、神様仏様に感謝しかない。
イクさんに「私とあんたはどんな巡り合わせで出会ったんだろーねぇ。
不思議だねぇ」と何度も言われたことがある。
巡り合わせ、本当に不思議な縁があって、九十半ばのイクさんと三十路前の私が出会い、こうしてほぼ毎日顔を合わせている。
こんな素敵なおばあちゃん達と出会える仕事をしていることは、私の自慢だなぁと思う。
となりに座りながらイクさんを見ていたら、もしもイクさんに何かあったら…とあらぬことを考えてしまった。そうしたら私はまた物凄いダメージを受けるんだろうと恐くなった。
ヒロさんのときのように仕事を辞めたくなってしまうだろう。
考えたくはないけれど、この仕事をしていればお別れをしなきゃいけないときはある。
知り合いの介護士さんもある利用者さんの最期の寸前に関わっていた。
ギリギリのところで入院され、後日亡くなられたことがわかった。
「あの方の部屋の近くに行くと、いまでも胸が痛くて…」と辛そうに話された。
すごくわかるなぁ。
私もヒロさんの部屋の小窓を見ると、なんとも言えない気持ちになる。
仕事のデキる優しくて素敵な介護士さんなんだけど、やっぱり別れの辛さは同じなんだなぁと思った。
一生懸命だからこそ、もっと何かできたんじゃないかと胸が痛むんだと思う。
辛そうな顔をみて気の引き締まる思いがした。
介護の仕事は幸せと悲しみが大きい。
私は単純で不器用だからいろんなことに振り回されてうまくやれないけど、この幸せと悲しみを感じるアンテナはずっと真っすぐ持っていたい。
それを感じなくなったら、私に介護の仕事をする資格はない、と思う。
勉強して取得する資格も大事だけど、ホントに大切な部分を持って仕事に向き合ってたい。