介護で味わった「アルプスの少女ハイジ」
今日の昼でシゲさんが退所されることになった。
前々から老健に予約がしてあったらしく、うちはつなぎだったらしい。
車椅子生活のシゲさんには何かと関わる機会が多かったので、みんな声を揃えて「寂しくなるね〜。涙が出そう」と話した。
ケアマネは「新しいとこはキレイな女の人がいっぱいおるとこだよ。身体を治してきてね。いまより元気になったらごはん食べに行こうね」とシゲさんに報告していた。
キレイな女の人、のフレーズに敏感に反応するシゲさんが可愛らしかった。
さすが、女好きだなぁ。
自立に近い方が多い中でのほぼ全介助のシゲさん、サービスや声かけに正直大変だなぁと思うことも度々だったけど、お部屋を尋ねたときの笑顔やたまに言ってくれる「ありがとう」が私たちを随分癒してくれていたと思う。
シゲさんは昼食後に家族さんと行かれるらしい。
私は昼までの勤務だったので、食事中のシゲさんに「今日はお出かけですね。気をつけてね。私これで帰るけん、また会いましょーね」とあいさつしたんだけど、シゲさんは食事に夢中。
なんてことないアッサリとしたお別れだった。
ちょっと寂しかったなぁ。
最近キクエさんが絶好調。
今日も廊下を這ってお散歩(?)されていた。
私も廊下にぺたんと座り「キクエさん、おはようございますぅ。今日もお元気ですねー」
「あらぁ奥さん、来てくれちゃったんじゃね〜」と二人で手を取り合って廊下の真ん中でおしゃべり。
そのあと車椅子に乗ってもらったんだけど、足の立ち上がり動きがすこぶるイイ。
これはたぶん、息子さんがよく来られて歩行器での散歩をしておられるためと思う。
みるみる足が強くなっていく。
ゆうべなんて、スタッフが洗面台を掃除していると「キレイになりますね〜」と声がし、振り向くとお部屋から手摺りづたいに歩いてきたキクエさんが立っていたとのこと。
こんな驚きの瞬間、素敵な場面に出会えるのも、介護の仕事の醍醐味と思う。
『アルプスの少女ハイジ』に出てくるクララの感動を、現実で味わっちゃう感じ。
今朝キクエさんは「車じゃなくて、あのこげなやつがいいですわ」とジェスチャーで歩行器での移動を希望されたらしい。
今日の昼食から歩行器で食事に降りられた。
小さな身体で歩行器につかまり、必死で歩かれる姿は本当に素敵で惚れぼれした。
「キクエさん、歩いて来られたんですねー。スゴイわぁ」と話し掛けると「まあ奥さん、ありがとうねー」とニコニコ顔でご飯に向かわれた。
キクエさんが這って出たり歩かれることに関して、スタッフによってさまざまな受けとめ方がある。
私なんかは、すげぇじゃんって大喜びしちゃって、注意しながらもいまの意欲を失われないよう一緒に頑張りたいと思う。
人によっては、危ないし今までのやり方と混乱する、毎回同じことをしなきゃいけない、と言う。
確かに危険性がなく、スタッフもラクができるのは後者の考え方。
だけど私は一緒に喜びたい。
そのリアクションを見て「私のしたことで一緒に喜んでくれた。まだまだできるんだ」みたいなハリが生まれてくるんじゃないかと思う。
いままで当たり前にできたことが難しくなり意欲が低下しがちな中で、またできたってことが生きるエネルギーになったら、笑顔も増えてもちろん身体も元気になる。
お年寄りを集めてみんなで幼稚園みたいなことさせられてるより(そうゆうのを否定してるわけじゃなくて、私がそうゆうの苦手なだけ)ずっとずっと生活に密着していてしかも効果的。
日常の中で当たり前にさりげなくそんなことをやっていけたらいいなぁ。
生活の中で小さな喜びや感動を、利用者さんと一緒に感じて生活していきたい。
そんな仕事をやっていくのが理想だなぁ。