気持ちな介護ヘルパー
朝からHさんが病院へ行かれたので、今朝はHさんの顔が見れなかった。
普段換気や掃除を嫌がられるHさんだから、お出かけの合間に掃除をさせて頂いた。
めったに開けてくれないカーテンと窓を開け、Hさんを思い浮べながら掃除をする。
急須に茶ガラが入っていた。まだ温かいから今朝飲まれたんだろーけど、茶ガラの色は変色していた。何度飲まれたんだろう。もったいないからなのか、急須を洗いに行くのがおっくうなのか。
「ふぇふぇっ」といつも笑っておられるけど、心の奥では沢山のことを考えておられる。そこに身体がついていかないことを、とても歯痒く感じておられる。
私がKさんのポータブル介助やシーツ交換に忙しくしていると、いつの間にか帰っていたHさんが裸足で廊下を歩いていた。
「Hさんおかえりなさぁい。今日お部屋掃除させてもらいました。あらっ?なんで裸足?」「いま…車が…」受診に付き添ってくれた家族を見送られた様子。なんとも言えない見たことのない表情だった。
Hさんのお部屋にお邪魔して「病院疲れましたか〜?」と聞くと、Hさんは悲しそうな悔しそうな顔で話された。
「入院せないけんようなこと(先生が)言うけど、したって善くはならん」「わしはね、生きとるとこと死ぬところのどっちでもないところにおるだけん」Hさんの身体の状態はあまりよくないとのことだった。
確かに最近食事の飲み込みが悪いよなぁ。
休憩のあとは入浴。その前にRさんのお部屋に行った。
Rさんは人嫌いとゆうかひきこもり状態。
昼食の声掛けに行ったときは無視されてしまったけど、めげずに話し掛けてみる。
「Rさん、ゴミすてさせてください」「いいいい、そんなことしたってわしは金払えんけん」「私の空いた時間でするだけだからお金はいりませんよ。床も拭きましょーかねぇ」「そげなこといいけん。金はないで」
表情がやわらかいからイケそうだなぁと強行手段。持ってきていた雑巾で拭きはじめる。
「いいけん」と言いながらもRさんは足を上げで床が拭けるように気遣ってくれた。ふわぁ〜っと温かい気持ちになった。
こんな瞬間があるからがんばろうって気持ちになれる。
夕方Hさんのバイタルチェックに行った。
「最近咳が多いみたいだよ。おかずも残ってるし…」と言うと「あげだ、咳が出ぇだが。おかずはな、ちょっと食べてまんなかったら(美味くなかったら)食べへんが」「わしはいっとご飯作っちょっただけん。おかさん(奥さん)が早におらんやんなって、それからずーっと作ってきたが」
Hさんは目をクリクリさせながら話してくれた。「私最近弁当買ってばっかりだよ〜。ひとり暮しだし。Hさん今度作りに来てよぉ」「ふぇふぇっ、行きて作っちゃーでぇ」
Kさんが廊下に出ていたと、おばさんヘルパーが嫌そうな顔でKさんの介助をしていた。
お部屋のカーペットの上にスリッパで立っている。
Kさんのお部屋のものは、この人にとっては『キレイじゃないもの』なんだろうな。だって普通カーペットの上ではスリッパ脱ぐもんでしょ。こいつサイテーだな。
「足動かして!動かさなできんでしょっ!」Kさんは強引な介助をされとても痛がられ、一気に不穏になっておられた。
「あいたたっ…痛い…」痛がって動きの悪いKさんにおばさんヘルパーはイライラしていた。
私は「交替します」とおばさんに出ていってもらった。
大好きなKさん、今日は昨日とは違って穏やかに一日を過ごされた。なのにこいつのケアのせいで不穏にされたら、Kさんも私もたまったもんじゃない。
Kさんは「アンタ来てくださったんやぁ」と笑顔になり、夕食をモリモリ食べて休まれた。よかったぁ。