介護ヘルパーとして何ができるんだろう・・・
今朝は雨のせいでバスがかなり遅れ、土砂降りの中バス停に立っているとすごーくテンションが下がってしまった。
遅刻ギリギリで会社に着いて、意味もなく不機嫌なスタートだった。
そんでもって、朝イチの仕事はまたロンさんのお部屋。
ベテランおばさんと二人、ロンさんのご機嫌取りをしてることに無性に腹が立った。
今日は私の大好きなヒロさんの受診日。
ヒロさんはこないだから息子さんに入院について説得されていた。
その中での受診だからきっと複雑なツライ気持ちで病院へ向うのだろうと思い、少しでも顔を見て話したかった。
なのに二人がかりでロンさんのご機嫌取り。
なんか切なくなり、ムカついてしまった。
まあ、ムカつくことはないんだけど…。
私の「心ココニアラズ」が伝わったのか「次の仕事があったら先行っていいよ。私もいい頃見て出るけん」とおばさん。
私は一足先にロンさんのお部屋を出てヒロさんのところへ走った。
ヒロさんはダンディーな洋服で外出の用意を済ませ、お茶を飲んでおられた。
「今日は雨だけん、転ばんよーに気をつけて行ってきてね」と言うと「あのな、一ヵ月ぐらいは帰ってこらんけんな」「えっ?なんで?帰って来てくれるでしょ?」と聞き返すと「いんやぁ〜帰らんで。…わからんけどな」やっぱりヒロさんは何か自分の中で答えをだされたのかもしれないと思った。
でも今日突然入院になることはまず無いはず。
「私、ヒロさんが帰って来られるの待っちょーけんね。夕方まで待っちょーけん」
ヒロさんは「ふぇふぇっ、ほんなら待っちょれや」と言い、そのうち病院に出掛けられた。
私は午前中のサービスを早めに済ませ、空いた時間でヒロさんのお部屋掃除をした。
シーツに血がついていたのでシーツ交換をし、汚れた尿器を消毒し、気持ちをこめて掃除をした。
血が止まりにくいヒロさんだからどこかから出血したときにシーツに血がついたみたい。
トイレまで歩きにくいから夜間は尿器で用を足し、いつも一人で片付けておられるから尿器はひどく汚れていた。
そんなヒロさんの生活空間を掃除させてもらい、心から尊敬の気持ちが沸きだした。
高齢で入院を迫られても、こうして自分の始末を毎日当たり前にしておられるなんて。
なかなかできることではないと思う。
私はヒロさんを明らかにヒイキしている。
いつもヒロさんはワガママひとつ言わず静かに生活しておられる。
だからスタッフのほとんどは特別には接しない。訴えがないから接することがないし、目を向けることに気付いてもいないスタッフも多い。
そんな人だからこそ、役に立てるならさりげなくフォローさせてもらいたいと思う。
ヒロさんのようにあまりスタッフに目を向けられていない方や、ケアが大変だからと疎遠されがちな方のヘルパーでいたい。
ヒロさんは昼すぎに帰って来られた。
入院をすることに決まったらしい。
こないだまでは入院費用を気にして拒否しておられたのに、たぶん今回は承諾されたのだと思う。
きっと息子さんの説得にカンネンされたんだろーし、それ以上に入院することが家族に一番迷惑をかけないことだと思われたんじゃないかなぁ。
本当の気持ちはわからないけど。グッタリ疲れておられ、遅い昼食を珍しくお部屋で摂られた。
気持ちの疲れもきっとあったんだろーな。
午後はイベントがあり、看護士さんによる『遊びリテーション』みたいなことが行なわれホールは大忙しだった。
私は入浴介助だったのでときどき覗きに行くだけだったけど。
音楽に合わせて身体を動かして、皆さんとても楽しそうだった。
人の集まりが苦手なキクエさんも、看護士さんの動きに必死についていこうと一生懸命身体を動かしておられた。
そのあとのティータイムも満喫されていた。
キクエさんが居場所のない思いをしておられないかと心配していたので、私まで嬉しくなってしまった。よかったぁ〜。
夕方ヒロさんのバイタルチェックに行き、気になっていたので様子を聞いてみた。
「今日はどうでしたぁ?」「今日は…ほんに疲れた…」いつもとは違う表情でしみじみと言われた。
でも入院のことは言われなかった。
決定するまではたびたび入院の話をされたのに。今日は言いたくないのかな。
少しするといつもの表情で「血を三本も採られたが、いつも三本も採るが」
「なんだいかんだい難しい話ばっかりして、医者はアレしか仕事がないだけん」といつもの病院批判発言。
「病院はいろいろ面倒臭くて疲れるますがぁ」と私が言うと「ここもだで」と茶目っ気たっぷりの顔で私を見て「おまえがこうしてたんびたんび来るけんのぉ」と笑われた。うーん確かにそうだ。ヒロさんのほうが一枚上手だったな。