恋バナで盛り上がる介護
今日のはじめのサービスはロンさんだった。
実は最近私はロンさんが苦手…なんかいやらしい。
エッチなおじいさんって感じならなんてことないけど、イヤラシくて気持ち悪い。掃除に入ってもなぁんか空気が違う。
こないだからお風呂のときは服を脱がせてほしいと甘えたり、身体を触ろうとしたりする。
配膳をしていてもニタニタと舐めるよーに見られてゾゾっとしてしまう。
ロンさんはここのところ「家に帰る」を連発。掃除中も何度も言っていた。
私は「息子さんが心配しなーけん、お話してからがいいんじゃない?」など返事をするが、ロンさん的には抱きついて「ヤダぁ」とでも言ってほしい様子。
帰りたい気持ちを紛らわすかのようにセクハラをしておられる、ように見える。
おばさんたちはベタベタしてロンさんの気持ちを満足させているけど、私のモットーは『触らせるのが仕事なら、介護なんか辞めてやる』だから、もちろんヘラヘラ触らせたりはしない。
帰りたいなら帰ってもらえばいい。
だけどそれまでの声掛けでなんとかしたい。
おばさんたちは「寂しいけん帰らんでよぉ」「私も連れて帰らんとダメぇ」とキャバ嬢なみのトークと腕組みや抱きついたりの密着で、ロンさんの里心を阻止する。
そんなやり方を繰り返すおばさんたちに、私は正直疑問を抱いている。
私が触らせないからなのか、ロンさんはなんやかんかとしつこく言って来られる。
「帰るけど新聞社に電話してあるか?」と言ったかと思えば「今日の新聞がなくなった」と部屋に呼んで探させる。
しかもか睨みながらの命令口調。
ふざけるなぁー。
ヘルパーや介護職員はメイドじゃないっつーの。
思い通りにならないから入居者とゆう権力を振りかざす。
正直イヤになった。
人間としての拒否反応。
結局は帰れないなら違うところで満足したいんだろう。
だけど、だからってニヤニヤしたじいさんにベタベタするのが正解なのぉ?
介護に正解はないからなんとも言えないけど、私はそんな仕事ならしたくない。
「私とデートしよっ」とフェロモンおばさんがロンさんを息子さんの店まで連れて行った。
大成功だった。
息子さんに会ったら「(ホームに)帰るわ」と早々に帰ったのだと言う。
私は明らかに介護職員として失格だったと思う。
不安な気持ちを救えなかったから。だけどお色気やメイドのような対応で解決する介護はしたくないし、できないとゆうのが本音。
なぜかと言うと、もともとの性格のクセみたいなところが見えてるから。
ロンさんはすごくいやらしくやり方がキタナイ。
その部分を私は好きになれないから、ロンさんの今日の姿に拒絶反応してしまったんだと思う。
介護するほうもされるほうも人間。
受け入れられる部分とそうでない部分があると思っている。
お色気で解決する仕事なら、どうかおばさんたちどんどん解決しちゃってください。
どんなに自己嫌悪に陥ろーとどう言われよーと私にはできないから、私は違うところで頑張ります。
午後の入浴。
シュウさんの介助をした。
しっかりとした可愛いおばあさんだけど、利用者さんのことやスタッフの内部事情に詳しいところがコワイ。
初めて入浴介助したときも、どこからか私が独身と聞いて「紹介したい人がいる」と見合い話を持って来られた。
今日もその話だった。「アンタ、いい人おるんでしょおがぁ。なんで嫁にもらってもらえんかね?」「嫁にだぁもらってござん彼とおったってダメだよ」「そうしちょー間に子供が産めん年になるよ」など耳の痛くなるアドバイスをいただいた。
あいたたぁ〜確かにそうだ。さすがだなぁ。
耳が痛いながらも、私のネタで楽しいお風呂だった。いくつになっても女は恋バナが好きだから。