介護の仕事は待つ仕事
今日は一日中サービスが入っていた。
はじめはフジさんのお部屋の掃除。
フジさんは退院されたばかりでおうちに帰ることが目標。
在宅生活のカンを取り戻すためと、術後のリハビリを兼ねて短期で入所されている。
そのためお部屋にはテレビもなく、ラジオとベッド。
ビジネスホテルよりガランとしている。
だけどフジさんはお上品で穏やかで若々しい、素敵な奥様。
だからガランとしていても、それがスッキリしたキレイなお部屋に見える。
フジさんが素敵だから、フジさんの空間もまた素敵に見える。
お部屋に行き挨拶をすると「すいませんね〜。私いま寝てたんですよ。ゆうべはなかなか寝つけなくて夜中にも何度も目が覚めて…だから朝ごはんが終わって眠くなっちゃって。ダメね、寝てばっかりで何にもしないの」と眠そうな顔。
フジさんにとっていまの生活は本当に暇だろうと思う。
短期入所だから必要最小限のものしかなく、片付けるものすらない。
家事をしよーにもほとんどサービスに入っているので必要がない。なにかをしよーにもなにもない。
退屈だろーなぁと気の毒になる。
だから夜はなかなか眠れず昼間ウトウトしてしまう。
メリハリがない。
こないだまでは娘さんと毎日家に帰り本当のリハビリ(家事のトレーニング)をしておられたが、娘さんが県外に帰られたのでいまはうちの住宅だけでの生活。
最近はできるだけ買い物や散歩に体操に誘っている。
声をかけると「そうですね〜。行ってみましょーかぁ」と意欲的に出掛けられる。
家に帰るとゆう目標があるから、フジさんはこの生活をがんばっておられるんだなぁと思う。
楽しくできるだけたくさんの、家へ帰るためのリハビリをしてもらいたいと思う。
その後も何人かの方の掃除に行き、午前中最後はシュンさんのお部屋に伺った。
シュンさんはトイレの洗面台で、オーダーメイドの高級ブラウスを手洗いし絞っておられる最中だった。
「シュンさん、脱水機にかけましょーかぁ?絞るの大変でしょ?」
「お願いするわぁ。脱水したらすぐ乾くものね。今日は天気が悪いからお部屋にしか干せないでしょう?あ〜よかったわ」
私はブラウスを脱水機にかけ、ついでに雑巾を持ってお部屋へ。
「シュンさん、床拭いときますね」
「うん、ありがと。さっきから少しずつ片付けてるの」床に書類が山積みになっている。
机の上からおろしただけじゃん?
「いま移動したの。まだこんなにあるのよ」机の上は大変なことになっている。
「また全部片付けるから、アナタ手伝ってよね?」…いったい何時間かかることだろう…
「うん、わかりました。またゆっくりやりましょう。片付けのとき声かけてくださいね」
大変そうだけど、シュンさんに頼りにしてもらえるなんてめちゃめちゃ嬉しかった。
いつになるやらわからないけど、そのときはじっくり付き合うぞ、と決めた。