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最新記事【2006年06月21日】

今日はヒロさん入院の日。

朝イチに会いに行こうと決めて仕事に入ったのに、なんか事務所前からヒロさんの声が聞こえる。
ええっ?と思って見てみると「いまのぉ、荷物取りに来たが」とよそ行きに着替えたヒロさんが立っていた。
洗面器や下駄箱の靴を持って入院の荷造りをするつもりらしい。
ヒロさんは片足をひきずっていて手摺りにつかまりゆっくり歩かれる。
そんなにたくさんの荷物を持たせるわけにはいかないので、私は一緒にお部屋に上がり荷造りを手伝わせてもらった。
「ヒロさん、いつ帰ってきてくれるの?」
「一ヵ月か二ヵ月か…帰らんかもしれんで。わからんが」「私ここで待っちょーけん、元気になって帰ってきてね」
「ふぇふぇ、待っちょーかや?…そげんなぁ…」とヒロさんは言葉に詰まり、目にはウルウル涙を溜めて泣くのを必死でこらえておられた。
背中をさすりながら「一ヵ月会えんと寂しいけん、病院に会いに行こうかなぁ」
「おお、会いに来いや」泣くのをこらえながら笑顔でそう言われた。
涙がこぼれ落ちそうな笑顔で、つられて私までウルウルになった。
迎えがくるまであと一時間もあるのに準備は万端。
「お茶でも飲んで待っとられたら?煎れましょーか?」と急須を見ると、いつもは茶ガラそのままの急須がキレイに洗われていて「もう飲んだけんいいが。こげして待っちょーけん」と座っておられる。
そんなに完璧に身仕度されると、もう会えなくなるよーな気がして悲しかった。
「出発のときお見送りするけんね」と言うと「見送りやなんやいいけん」と照れ臭そうに言われた。

私はその後買い物を頼まれ、帰ってきたらもうヒロさんはおられなかった。
スタッフに聞いたら、みんなの言葉にヒロさんは涙ぐみながら車に乗られたとのことだった。
その買い物が長引いたのはミサさんとご一緒したからだった。

エレベーターでミサさんに会ったので「お出かけですか?」と聞くと「いまね、スーパーに買い物行こうかと思ってねぇ」
「ホントに?私も買い物頼まれたんですよ。一緒に行かせてもらってもいい?」
「ホントかね。ほんなら一緒に行かやぁ」と二人で出かけた。
ミサさんは最近足が悪い。
散歩や買い物に一人で行かれるので、私は一度様子を見たいと思っていた。
案の定、足取りはかなり悪かった。
道路のほんの少しの膨らみにも足がつっかえる。
私の手を痛いぐらい握って力を入れ歩かれた。
いつも一人で、よく転ばれなかったなぁ。
スーパーではカートを押しながら、野菜や生活用品をアレコレと見て廻られた。
「あのね、アレが欲しいに。アレ…アレ…あのこげして食物を包むやつ」とジェスチャー混じりに教えてくれる。
「あっ、ラップ?」
「そうそうそうそう!」
「ラップはねぇ…あっちだわ。行きましょう」
こんな具合にスーパーをぐるぐる。
私は饅頭や飴を頼まれていたのでそそくさとカゴに入れ、ミサさんに付き合った。
ミサさんが饅頭コーナーで「どれがいい?アンタに買ってあげる」
「いいですよぉ。気を使わんでください」
「いんや、お世話になったけん。どれがいい?コレは好き?」と饅頭のパックをカゴに入れて、私の分まで買ってくれた。
申し訳なくてしょうがない。
だけど気持ちだから受け取ることにした。

ミサさんは耳が遠い。
レジのおばさんに「カードお持ちですか?」と話し掛けられても「〇〇円です」と言われても「はぁ?なんですかいねぇ?」レジのおばさんは面倒臭そうな顔。
ミサさんはそんなこと気にもせず一万円札を出された。
たぶん金額がよく見えないし聞こえないからだと思う。
スーパー行くたびこれじゃあ、小銭貯まっちゃうだろーなぁ。
なんかせつない光景だけど、気にもせずマイペースなミサさんが、すごくすごく逞しかった。

買い物袋に私のために買った饅頭を入れ「はい、これはアンタのだよ」と渡してくれた。
帰りの私は右手に買い物袋三つ、左手にはミサさん。
強い日差しの中を汗だくで帰った。ほんっと暑くて大変だったけど、ミサさんとのデートはすごくすごく楽しかった。

自分らしく介護

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